Home / 社長ブログ

前回のポストでここ数ヶ月の激しくなったHadoop界隈のニュースをお伝えしましたが、時を同じくしてクラウド関連のニュースが相次ぎました。

4/12 「VMware、開発者に選択肢を提供するオープンPaaS「Cloud Foundry」を発表

米EMC傘下のVMwareは、同社の「Open PaaS」戦略に基づくオープンプラットフォーム「Cloud Foundry」を発表した。同社が2009年に買収した米SpringSourceのJavaクラウドプラットフォーム「SpringSource Cloud Foundry」を基にしたプラットフォームになっている。Cloud Foundryでは、開発者は利用するフレームワーク、アプリサービス、アプリを配信するクラウドをそれぞれ選択できる。フレームワークとしては、 Spring、Grails、Node.js、Ruby on Railsをサポートしており、今後対象とするフレームワークを増やしていくという。また、Cloud Foundryは、構築したアプリをプライベート、パブリック、ハイブリッドのいずれのクラウドでも配信できる。同社のvSphereおよびvCloud のほか、米Amazon Web Servicesなどのパブリッククラウドサービスで運営できる。オープンアーキテクチャであるため、EucalyptusやOpenStackのクラウ ドに対応するとしている。

5/3「レッドハット、IaaSの構築・管理製品「CloudForms」と開発者向けパブリックPaaSを発表

Red HatはLinuxの会社からプラットフォームの会社へ変わった〜ホワイトハーストCEO

米国Red Hatは、5月3日〜6日に開催された「Red Hat Summit & JBoss World 2011」においてクラウド新製品「CloudForms」および「OpenShift」を発表し、VMwareやMicrosoftと対抗して行く戦略を明らかにした。「CloudForms」は、IaaSおよびハイブリッドクラウドを構築し、管理していくためのソフトウェア製品。「CloudForms」が提供する機能は、(1)アプリケーションライフサイクルマネジメント、(2)計算リソースマネジメント、(3)インフラストラクチャサービス−−の3つに大きく分けられる。

5/9 「ネットワールド、米Nimbula社とディストリビュータ契約を締結

IaaS基盤を短時間で、安価に構築可能な「Nimbula Director」の国内販売を開始、「Amazon EC2」の良さを、プライベート / パブリック / ハイブリッドのすべてのクラウドに提供する。

5/11 「UbuntuがEucalyptusを断念してOpenStackに切り替え

Ubuntu がEucalyptusを断念してOpenStackに切り替えることを、ブカレストで開催中のUbuntu Developer Summit(UDS)でCanonical社のサーバ・エンジニアリングマネージャが明らかにした。Eucalyptusは2009年のUbuntu 9.04からUbuntuのサーバ版に搭載されている。OpenStackは始まったばかりのプロジェクトだが、たちどころに普及しつつあり、複数の大手 ベンダー(Citrix社、RightScale社、およびDell社)にサポートされている。Canonical社では残りのサポート期間も Eucalyptusのサポートを継続するため、10.04 LTSのユーザには2015年までパッチやアップデートが提供されることになる。Ubuntu 11.10はEucalyptus 3.0も搭載する。

5/12 「IDCフロンティア、「CloudStack」を採用したセルフサービス方式のIaaSを発表

IDCフロンティアのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)「NOAHプラットフォームサービス」におい て、7月からセルフサービス方式を導入すると発表した。仮想マシンやネットワークなどの管理操作を、WebブラウザーやAPI(アプリケーション・プログ ラミング・インタフェース)経由で実行できる。IaaS構築ソフトとして米クラウド・ドット・コムの「CloudStack」を採用した。

6/2 「シトリックス、あらゆる組織でプライベートクラウドやパブリッククラウドの構築を可能にするProject Olympusを発表

クラウド事業者がIaaSを構築することを目標としてオープンソースで開発が進められている「OpenStack」の商用ディストリビューションを、米シトリックス・システムズが「Project Olympus」として進めることを発表した。Project Olympusは、同社の仮想化ハイパーバイザ―であるXenServerをクラウド向けに最適化したバージョンと、IaaS基盤を構築する OpenStackにより構成されています。ただし、Project Olympus版OpenStackも、VMwareやHyper-Vなど他社のハイパーバイザにも対応するオープンさは保証されるとのこと。

6/3 「CTCがクラウド基盤ソフト「Abiquo」の販売を開始、6種類のハイパーバイザーに対応

Abiquo Enterprise Editionは、さまざまな種類の仮想化製品で構成されるクラウド環境を、一元的に管理するためのソフト。コンピュータ資源を必要に応じてアプリケー ションやユーザーに割り当てるプロビジョニング機能、仮想化を実現するハイパーバイザーの制御機能などを備え、ハイパーバイザーはCitrix Xen Server、KVM、Microsoft Hyper-V、Oracle VM Virtual Box、VMware ESXi、Xenの6種類をサポートする。

先行するAmazon Web ServicesがElastic BeansTalk等で矢継ぎ早にPaaSを強化し、Google App EngineとSalesForceが追いかけていた構図から、OpenStackやCloudstack等のプライベート・クラウド構築環境がオープンソースを武器にユーザーやプロバイダを染めてきている事を背景に、VMwareとRed Hat、Citrixがハイブリッド・クラウドで殴り込みをかけてきた、と言う構図でしょうか。

プライベート・クラウドは、単なるAmazonのようなIaaSの自社保有と言う側面だけでなく、Hadoopのような分散処理アプリケーションの基盤としても要求され、さらに異種多様な仮想化基盤とIaaS/PaaSパブリックサービスを統合して、ハイブリッド・クラウドに進化しつつあるのは、間違いありません。

またその事によって、HP/Oracle(SUN)/Cisco/IBMなどHWベンダが、プロプライエタリな垂直統合モデルで顧客を囲い込もうとしても、上記のような新興ベンダのオープン水平分業モデルが切り崩して行くのはないでしょうか。

P.S. Microsoftは表立った発表をしていないようですが、着々と何かを仕込んでいるようで不気味です・・

追記:今気がつきましたが、Gartnerも発表していました。

Gartner、2011年は PaaS の年になるとの見解を発表

パソコンに始まってオープンシステム、RDBMS、インターネットとパラダイムシフトが起きるたびに、信頼性やセキュリティを持ち出して新技術をおもちゃ扱いした人たちは皆退場して行った。今クラウドをおもちゃ扱いする人たちは、これから退場する人たちである。

この事を改めて強く感じたのは、Googleが昨年3月に発表した "Datacenter as a computer"が翻訳され「Googleクラウドの核心」として発刊されたので早速読んだからです。

リッテル上席研究員(東大助教授)の太田さんの例えでいうと、水道のユーザーインターフェースは蛇口と排水溝だけだが、背後にはダムから浄水設備、水道配管、課金メータ、下水道、下水処理設備等膨大なインフラから成り立っているのと同様に、シンプルなWEBユーザーインターフェースだが、背後に膨大な仕組みで成り立っているのがクラウドということになりますが、本書はまさにその膨大の仕組みが、どのように作られているかが解説されています。

アプリケーションがデータセンターの設計を変え、IT業界構造を変える

本書でWSC (Warehouse Scale Computing)と呼んでいるものは、単に数万台のコンピュータを倉庫に詰め込んだものではありません。WEBアプリケーションやHadoop等の分散処理ソフトウェアによって、使用するハードウェアを均質化し、冷却設備や電源設備から建屋まで、電力あたりの処理能力を最大化した新しいプラットフォームがWSCです。そしてそれは決して規模だけが競争力ではなく、細かな電力当たりの処理効率改善の積み重ね(プロセッサやメモリ、ディスク、電源部等の部品単位での見直し)である事がよく分かります。

10年前までは、乱暴にいえばHW>SW>設備>電力という順で高額だったコストが、現在では電力>設備>HW>SW(オープンソース)という構造に変化し、処理コストは限りなく消費電力+使用通信帯域課金に近づいて行くと考えられます。

つまりWSCで提供出来るものは、メインフレームやハイエンドUNIXサーバとNAS/SAN共有ストレージが入れ混じったデータセンターでは太刀打ち出来ないレベルの電力あたりの処理能力であり、直接的にいえば破壊的コストで処理能力を提供できるわけです。

従来型アーキテクチャのアプリケーションでは、この破壊的コストパフォーマンスを享受出来ないことが明白であり、この新しいアーキテクチャを活用出来る企業が生き残れるのは間違いないでしょう。

ここでいう「クラウド」は広義のクラウドサービスではなく、スケールアウトする分散処理技術としてのクラウドのことです。サービスとしてのクラウドは以前取り上げたようにいくつかの利点がありますが、クラウドでないと実現出来ないキラーアプリケーションというのは実はあまり無いのが現実でした。

しかし昨年秋に開催されたHadoop World 2009から、データウェアハウス、データ分析にクラウド技術を採用すると今まで不可能であった高速大量データ分析が可能になることが注目され始めたようです。VISAやチャイナテレコム、JPモーガンなどがHadoop MapReduceのようなNoSQLデータベースの実用化を始めている事が発表され、国内でもヤフーや楽天での実績が出始めています。

データウェアハウス(ビジネスインテリジェンス)の分野では20年以上前からテラデータ、Oracle、最近ではNeteezaSun/Oracle Exadataなどの、SQLでの大量データ処理に特化してきた高価なシステムが必要でした。しかし近年のデータ量の爆発的増大に答えたくともユーザーはこれ以上高価な投資はできないので、保存期間を短くしたりサマリーに集約したりしているのが現状でしょう。

Clouderaのブログで紹介された欧州最大のターゲティング広告プラットフォームのnugg.adの事例では、オープンソースのCloudera Hadoop CDH1 ディストリビューションを採用し、Opscodeの Chef を用いたプロビジョニングを行っています。サーバー3台でのスモールスタートから始め、今では計36コア、8TBのディスクのクラスタで処理、以前では5日かかった処理時間を1時間に短縮し、これまで提供が考えられなかったような付加価値サービスが可能となり大きな投資対効果を実現しています。

このようにペタバイトクラスの超大規模データウェアハウスではなくとも、データ分析を競争力としたい先進ユーザーは、新たな選択肢としてクラウド技術を活用したNoSQLデータウェアハウスを検討し始めています。この分野は当分のあいだ目が離せそうにありません。